FSanalyzerの使用手引 ver.2.0.37

はじめに

FSanalyzerは、企業の収益性、安全性、リスク、成長性そして、 資本資産価格モデル(CAPM)による株式価値の財務指標を計算して、 長期投資候補銘柄を探索することを目的にしています。
FSanalyzerは、これらの分析を手間をかけずに機械的に実行できる機能を提供します。

開発は下記の【参考文献】の
第8章  収益性の分析
第10章 安全性の分析
第11章 不確実性によるリスクの分析
第12章 成長性の分析
第14章 株式価値評価モデル
を参考にしています。
モデルの詳細を知りたい場合は参考文献を参照してください。

【参考文献】

個人が資産構成を貯蓄から投資へ重点を移すためには普段から投資情報を効率的に収集・分析する習慣を身につけていることが大切です。
そのためには、経済新聞などからの企業情報収集、企業の財務状況の分析、株価動向の管理を普段から行っている必要があります。
SoftHompoは、このような観点から個人投資家支援ツールとして、
●NewsCollect(新聞記事管理ツール)
●StockManage(株価データ管理ツール)
●FStateman(有価証券報告書管理ツール)
●FSanalyzer(財務諸表分析ツール)
を開発し公開しています。
これらのツールを使用することにより、短時間で効率的に投資情報を管理することができます。

機能および特徴

  1. 収益性の財務指標として、総資本事業利益率(ROA)、自己資本純利益率(ROE)、売上高研究開発比率を求めます。
  2. 安全性の財務指標として、インタレスト・カバレッジ・レシオを求めます。
  3. 不確実性によるリスクの財務指標として、損益分岐点を最小二乗法で求めます。
  4. 成長性の財務指標として、サステナブル成長率を求めます。
  5. 銘柄の株式価値を推定します。
    FStateManの財務データとStockManageの株価データを基に”株式価値評価モデル”を実行します。
    資本資産価格モデルで必要な情報は、FSanalyzerが収集するので、数個のパラメータを指定するだけで 株式価値評価モデルが実行できます。
  6. 財務諸表分析結果は、財務指標別あるいは銘柄別で一覧表示できます。
    財務指標別一覧表示では、財務意表ごとに同業他社との比較検討が簡単に行えます。
    銘柄別一覧表示では、銘柄ごとに推定された財務指標が表示できます。
  7. 財務指標の一覧表示では、指標ごとにソート表示できます。
    簡単に特定指標に注目して銘柄を抽出できます。

操作手順

ここでは、FSanalyzerを使用する手順について述べます。

FSanalyzerの起動

FSFSanalyzerインストール時、データベースファイルはドキュメントフォルダ (C:\Users\[ユーザ名]\Documents\FSanalyzer.fsadb)に作成されます。
複数のPCで同じデータを参照するような場合は、NAS(Netowork Attached Storage)にデータベースファイルを作成することができます。

株価データ、財務データの設定

[ファイル]>[データベースファイル設定]メニューを選択して、株価データ、財務データファイルを設定します。

国債利回りデータの登録

[分析]>[過去の金利登録]メニューを選択し財務省のHPから過去の国債利回りデータを登録します。
[分析]>[今月の金利登録]メニューを選択し財務省のHPから今月の国債利回りデータを登録します。
取得した金利情報は、[表示]>[金利表示]で確認できます。

分析

[分析]>[分析]で株式価値評価モデルあるいは損益分岐点などを実行します。

分析結果一覧

[表示]>[分析結果]で分析結果一覧を表示します。

分析モデル

財務分析のモデルについて記述します。
モデルの詳細については、参考文献を参照してください。

収益性の分析

収益性の分析のために、総資本事業利益率(ROA)と、
自己資本純利益率(ROE)と求めます。
また、ROA,ROEから売上高純利益率、総資本回転率、財務レバレッジも求めます。
総資本事業利益率 = 営業利益 + 持分法利益 + 受取利息・配当金 使用総資本
自己資本純利益率 = 親会社株主に帰属する当期純利益 自己資本
売上高純利益率 = 親会社株主に帰属する当期純利益 売上高
総資本回転率 = 売上高 使用総資本
財務レバレッジ = 使用総資本 自己資本

安全性の分析

安全性の分析のために、インタレスト・カバレッジ・レシオを求めます。
インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 + 持分法利益 + 受取利息・配当金 支払利息・社債利息等

損益分岐点

不確実性によるリスク分析のために損益分岐点を求めます。
現在の会計制度では、ほとんどの企業で製造原価の詳細は公開されていません。
したがって、ここでは損益分岐点を最小二乗法で求めます。
入力として、売上高と費用の時系列データを与えて費用を固定費と変動費に分解します。
最終的に安全余裕度を求めて比較企業のそれと比べて投資判断を支援します。

財務データとしては、通期データ(12か月)と四半期データ(3か月)が存在します。
固定費でも解析期間が長くなれば、変動して解析精度が悪くなります。
可能であれば、2年間の四半期データを使用して分析すのが好ましい。
通期データを使用する場合は、5年程度の解析期間のデータを使用するのが妥当のようです。

解析精度を高めるために、固定費的要素の費用を費用額から控除する機能があります。

通期データを使用する場合
売上高は、財務表の”売上収益”
費用は、財務表の”売上原価”+”販売費及び一般管理費”ー”控除項目の金額”
控除項目としては、人件費、減価償却費、研究開発費等があります。
これらの科目は、元来固定的な費用であり操業度により変動するものではないからです。

四半期データを使用する場合
四半期財務表の金額は、累積金額が表示されているので、前期の金額の差分を求めて3か月間の金額に変換します。
控除する要素の控除額は、その要素の通期の金額の1/4を第1四半期、 第2四半期、第3四半期、第4四半期の費用金額から控除します。
控除する項目のみ、常に通期のデータを使用するのはプログラムの使い勝手を良くするためです。
(控除する要素は元来固定費なので四半期で変化しないとみなせる。
また、企業によって控除する要素のデータが通期のデータしか公開していない場合がある。)

成長性の分析

成長性の分析のために、サステナブル成長率を求めます。
サステナブル成長率 = ROE × ( 1 配当性向 )
配当性向 = 配当金 当期純利益

【注意】
配当性向は、配当の効力発生日が当期に属する配当を配当金とする。
当期の配当金は、キャッシュフロー計算書の財務活動によるキャッシュ・フローに記載されている。

株式価値評価モデル

ポートフォリオ理論の資本資産評価モデル(CAPM: Capital Asset Pricing Model)の自己資本コストを使用して、 割引現在価値モデルの残余利益モデルの株式価値を評価します。
株式価値 = 当期純利益 自己資本コスト
E ( R i ) = R f + β i [ E ( R m ) R f ]
β i = cov ( R i , R m ) var ( R m )
where
E ( R i ) = 自己資本コスト
β i = 市場ベータ値
R f = 無リスク利子率
R m = 証券市場全体の投資収益率
R i = 対象企業の投資収益率
益回り = 1株当たりの当期純利益 株価
株式収率 = 株式価値 株価 株価

当期純利益として1株当たりの当期純利益を入力した場合、株式価値は1株当たりの株式価値になります。
無リスク利子率として残余期間が10年の国債利回りの市場収益率の期間の平均値を使用します。
証券市場全体の投資収益率としてはTOPIXなどの市場収益率の期間の平均値を使用します。

画面構成

ここでは、機能ごとの処理について述べます。
処理の詳細は、それぞれの画面のHelp(F1キーで表示可)を参照してください。

Info ほとんどのメニューやボタンにアクセスキーが設定されています。

ファイル

新規データベースファイルの作成

新規にデータベースファイルを作成します。
ネットワークドライブ(NAS(network-attached storage))にも作成できます。

既存データベースファイルを開く

他のデータベースファイルを開きます。

データベースファイル設定

StockManageデータベースファイル、FstateManデータベースファイルを設定します。

設定

実行環境を設定します。

分析

FStateManで収集された財務データを基に財務指標を推定します。

財務諸表分析

財務諸表分析をFStateMan, StockManageプログラムと連動して実施します。

計算項目への勘定科目の設定方法
財務指標の計算項目への勘定科目の設定は、FStateManの表の表示画面から科目をマウスで Drap&Dropすることにより設定します。
複数の科目を同時に選択してDrap&Dropできます。

【設定例のビデオ】

科目の金額の採用方法
分析時に科目の金額は連結優先です。
連結決算を採用している企業の場合は、科目の連結データを採用します。
単独決算のみの場合は、個別データを採用します。

自動設定
計算項目への科目の自動設定機能が用意されています。
同一業種企業の設定の統計データを基に最も適合する設定を採用する機能です。
したがって、100%の正確性を保証するものではありません。

コマンド

コマンド
コマンド 処理条件
find 企業を検索します。
find FStateManが起動中であれば、FStateManのカレント企業と同期します。

収益性

分析条件
計算項目 内容
売上高 売上高の科目を設定します。
ROA  事業利益 営業利益と受取利息・配当金などの金融収益の科目を設定します。
ROA  使用総資本 負債及び資本合計を設定します。
期首と期末の金額の平均値を採用します。
ROE  当期純利益 親会社株主に帰属する当期純利益を設定します。
ROE  自己資本 株主資本とその他の包括利益累計額を設定します。
期首と期末の金額の平均値を採用します。
研究開発費 研究開発費を設定します。

成長性

分析条件
計算項目 内容
当期純利益 親会社株主に帰属する当期純利益の科目を設定します。
自己資本 自己資本の科目を設定します。
配当金 連結キャッシュフロー計算書の配当金の支払額の科目を設定します。

安全性

分析条件
計算項目 内容
営業利益 営業利益の科目を設定します。
金融収益 金融収益の科目を設定します。
金融費用 金融費用の科目を設定します。

損益分岐点

損益分岐点を求めます。

分析条件
計算項目 内容
財務表 通期決算:12か月の財務データを基に損益分岐点を求める。
四半期決算:3か月の財務データを基に損益分岐点を求める。
分析期間 分析期間を設定します。
売上項目 売上高の要素を指定します。
費用項目 売上原価と販売費及び一般管理費の要素を指定します。
費用控除項目 財務表”連結損益計算書関係”などの表から固定費である要素を設定します。
四半期の財務表の要素は指定しないようにしてください。

株式価値

株式価値評価モデルで分析します。

分析条件
計算項目 内容
市場コード 市場収益率の証券コードを指定します。
一般的にTOPIXあるいは日経平均の証券コードを指定します。
StockManageでは、
TOPIX  1002
日経平均 1001
です。
市場収益率の期間(年) ”無リスク利子率”、”証券市場全体の投資収益率”を求める期間です。
分析基準日 分析基準日=分析期間末日 + 1日
”1株当たり当期純利益”をFStateManのデータから選択した場合は自動的に設定されます。
分析期間(月) ”市場ベータ値”を計算する期間です。
分析期間=分析基準日 ー 分析開始日
1株当たり当期純利益(円) FStateManの財務データから選択します。
連結データが存在する場合は連結データを、個別データしかない場合は個別の1株当たり当期純利益が表示されます。

分析
コマンド 処理条件
個別分析 企業個別単位での分析は、入力された分析条件に従って分析します。
業種単位分析 ”市場コード”、”市場収益の期間”、”分析期間”は実行時に指定した条件を採用します。
”1株当たり当期純利益”、”分析基準日”は財務諸表のデータから最新のものを採用します。

今月の金利登録

無リスク利子率として財務省のサイトから国債利回りデータを登録します。
データは、過去の国債利回りデータと今年の国債利回りデータの二つのcsvファイルとして公開されたいます。

過去の金利登録

無リスク利子率として財務省のサイトから国債利回りデータを登録します。
データは、過去の国債利回りデータと今年の国債利回りデータの二つのcsvファイルとして公開されたいます。

表示

分析結果一覧

分析結果の一覧を表示します。
特定の業種のみの表示に限定することができます。
列のヘッダをマウスでクリックしてその列の値でソートすることができます。

金利表示

登録されている国債利回りデータ一覧を表示します。

ログ

メッセージログが出力された場合に表示されます。
ログは、削除することができます。
削除方法
ログ画面でマウスの右ボタンを押下し、ポップアップメニューを表示し”クリア”を選択します。

制限事項

ご意見

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